水に棲む花

北川景子が出演ってことで観てきましたよ。
舞台挨拶があるからとはいえ、立ち見*1が出る盛況ぶりでした。
お誘いいただいたD.Sさん、チケット取ってもらったエントシくんざーぼんさん、当日ご一緒した皆様方、ありがとうございました。


舞台挨拶での景子ちゃんの出演が無しになったのは残念でしたが、ハリウッド映画「ワイルドスピード3」のワールドプレミア出席のため急遽渡米ってことなんで、それじゃしょうがないな。所詮こっちは単館上映&レイトショー&上映時間90分足らずという、マイナー映画3連コンボだしな――とか、後藤憲治監督がひがんだりせず、ちゃんと景子ちゃんの話題に触れていたのが良かったです。
まあ、公開は遅れに遅れましたが、いち早く景子ちゃんに目をつけて起用した監督はエライ。この一事によって、彼は映画史に名を残すであろう*2。惜しむらくは「間宮兄弟」より公開が遅れてしまったことだ。「北川景子の出演映画第1作の監督」の栄誉を逃してしまった。
しかし、急遽渡米……って、初めから予定くらい見えてなかったのだろうか。ワールドプレミアが急遽決まるわけはないから、助演がどこまで呼ばれるかという当落線上だったのかもしれん。


景子ちゃんは、演技の良し悪しは別として(笑)かなり存在感が光ってました。
水面から顔半分だけ出している初登場のシーン、マジで「景ちゃん怖っ!」って声に出そうになりました。ていうか出しました。
目力があるので、下手に表情をつくらず無表情で睨まれる方がよほど怖いです。*3
更衣室でガンくれるシーンとか、相方の弱点を教えるのに逡巡するフリをするシーンとか、ちょっと演技が クド過ぎ ハリウッド的過ぎるんじゃないかというところもありましたが、漫画的なわかり易い描写ではありました。原作を読んでないで言うのも何ですが、漫画が原作なだけに、原作ファンには受け入れ易い演技だったんじゃないかなあ。


主演の前田亜季は初水着だそうです。貴重です。*4
相方の竹財輝之助は……演技の幅が無いなあ。撮影時期が「仮面ライダー剣」の終了間もない時期だと思うので、成長は窺えなくても仕方ないかなと思いますが、今回のキャラはまんまコタローだ。優しい役柄はよく出てたけど、雄々しさが必要なシーンでもなんかナヨっとしてるんだよなあ。舞台挨拶もそんな感じだったし、地なんだろう。


あと、上映時間は本来は82分でしたが、名場面を途中で止めて繰り返し放映するという、映画館側の好意的な配慮(嘘)もあって、少し延長してお楽しみいただけました。ありがとう、ユーロスペース!(嘘)


映画の内容全般としては、やや消化不良な感じ。あまりネタバレにならないように、適当にぼやかして言いますが、一応<続きを読む>にしておきます。


なんというか、設定と伏線と描写と進行が、ちゃんと噛み合ってないちぐはぐさを感じるのですよ。
演出が下手なのか、脚本がダメなのか、前田・竹財の演技が終わっているのか……。


例えば、主人公の二階堂六花(前田亜季)が、楪*5竹財輝之助)に「私を避けてたのもそれが理由?」*6と聞くシーンがあるのですが、別に避けてた様子は無いし。唯一、それに関することを立ち聞きしてしまうシーンはあるけど、「避けてる」というのとはちょっと違う。
その立ち聞きのシーンの後、ショックを受けた六花は家を飛び出してしまうのだけど、そこまで楪のことが異性として好きだという描写が無いので、すごく唐突な感じ。「私は楪ちゃんと、この世界で生きていくの」というセリフはあったけど、なまじ親族であるだけに、これだけでは恋愛としての真実味に欠けるんだよなあ。一応、プロポーズもどきのシーンもあるのだけど、六花を守るための方便という感じだったし。
そもそも、常識離れした事態に対する困惑や恐怖、なぜか水を恋しいと思ってしまう感情などが、言葉では説明されても、ちっとも迫ってこない。六花がやや控え目な大人しいキャラとして描かれているので、ただ叙事的に映像にしても、そういう内面を描写するのは難しいのかもしれないが。
二階堂家の家業にまつわるエトセトラも、すごく唐突に出てくる。楪が大学の図書館で調べ物をしていると、ゼミの先生に「自分の家の歴史を知るのは重要なことだな」*7と言われ、楪はキョトンとしてるんですな。「は?何の事?」って感じで。父を早くに失っているという設定もあり、彼は家業にまつわるエトセトラを知らされていないのかと思いきや、実は子供の頃に口伝されていたという。おいおい。


六花に心情描写を独白させるとかさ。幼少時の思い出シーンを前半にちょっと入れとくとかさ。調べ物も、大学の図書館じゃなくて、自宅の倉庫から古文書でも引っ張り出すとかさ。やりようはいろいろあると思うのですが。
おそらく、撮ったもののカットしてしまったシーンとかも、結構あるんじゃないかな。公開までがだいぶ長引いたことや、上映時間が短いことも含めて、たぶんそうだと思います。
DVD出すときは、そういうカットされたシーンも含めたディレクターズカット版にならないかな。


あと、やたらと暇な熱心な新聞記者が出てくるんだけど、こいつがあまりに暇過ぎ熱心過ぎて、こんな記者いねーよって感じなので、どうも現実感を削ぐ。この記者は原作には無いキャラだそうで*8
ラストも原作とは違うらしいのですが*9、その辺もちぐはぐさの一因になっているのでしょうか。


ハリウッド女優の北川景子さん演ずる水地立夏に関しては、こんな心情的にちぐはぐな描写はありません。ハリウッド的演技で、サルでもわかる心情描写です。さすがハリウッド女優です。
人間離れした能力を持ってる割には、なぜか暗殺がちっとも成功しませんが、それは主人公が死んでしまうと話が終わってしまうという物語の制約によるものですので、ハリウッド女優の責任ではありません。
わざわざ学校に入学してきた意味ねーじゃんというのもありますが、主人公を怖がらせてなんぼというサスペンスホラーの制約によるものですので、これもハリウッド女優の責任ではありません。

*1:というか通路に座り見

*2:希望的観測

*3:セラムンでも似たようなことを書いたような既視感が。

*4:北川景子は水着は無しですかそうですか。

*5:「ゆずる」と読む

*6:うろ覚え

*7:うろ覚え

*8:映画公式ページによれば

*9:映画公式ページによれば、その2