狙われない街

なんだこのタイトル? と思ったら、本当に狙われなかったよ(笑)
最後の挨拶代わりに事件を起こしていくとは、メトロン星人も人騒がせな…。
煙草をネタや小道具に使ったのは面白かったです。
あと、あの不思議な町並みの舞台選びも秀逸です。


ただ、「昔は良かった、それに比べて今は…」的なテーマを全面に持ってこられるのは好きじゃないですね。個人的な好き嫌いの問題かもしれませんが。
昔を懐かしむだけでは爺くさい。それに説教が混じってくると鬱陶しい。
確かに昔より悪くなってる部分はあるだろうけど、良くなった面だってあるだろうに。
3丁目の夕日のような単なる懐古趣味なら害は無いけど、現在を否定してくるとなると、そうも言ってられん。
書いてるのが爺さんならしょうがないなと思いながらも可愛げもあるが、若者が書いてるならば生意気でありかつ自虐的だ。で、今回の脚本の小林勇次というのは、1979年生まれだそうだから、はっきり言って俺よりだいぶ年下の若造だ。


空想科学ドラマを自負するなら、他の番組以上に未来に目を向けるべきだ。
子供番組なら、子供に夢を与えるべきだ。
暗い世相を風刺するにしても、結末は未来にほんの一筋の光でも灯して終わってもらいたい。
実際明るい展望の抱きにくいご時世だが、それだけにドラマにはそれを期待したい。


しかし今回の内容は過去を懐かしみ現在を否定しただけです。最後に一筋の光明も示さず、暗い未来を投げかけて終わり。夢も希望も無い。
開始早々発狂者が暴れてズシャグシャと……昨晩の牙狼もそんな感じでしたが、それと続けてみたので、より一層殺伐とした気持ちに。これも世相なのか。
刑事やメトロン星人などが、比較的明るいというか、好感持てる人柄で描かれていますが、これも現状に諦めを抱いた者の皮肉屋な側面を備えており、明るさの中でかえって陰が引き立つという格好です。
セブンの頃から印象的な夕景とあいまって、綺麗だけど陰のある明るさ、寂しさ、間もなくくる暗さ、不安、そういうのは存分に表現されていますが。
しかし、子供番組としてそれでいいのか??


科学考証も全くお話になりません。
今回は携帯電話が完璧な悪者です。メトロン星人がちょっと利用しましたが、あえて手を下さなくとも、いずれ放っといても前頭葉が萎縮し、人類が滅ぶ…と。
それって、医学的に裏付け取れてるデータなのか? 携帯関連会社から訴えられるぞ?
メトロン星人の発信する特殊電波自体が害ならば、携帯電話を持っていてもいなくても、電波のエリア内なら等しく発狂するはず。通話時に害がある以上は、携帯電話側の発する電波に害があるか、受信される音声に害があるか、どちらかでなくてはなりません。
前者なら携帯電話自体に細工する必要がありますが、せっかくの特殊アンテナ説は自ら明確に否定してしまいました。残るは音声に害があるということになりますが、それなら携帯などよりテレビの方が断然効果的なわけで。
子供の前に、悪を悪として突きつけるのは結構ですが、脚本家の好き嫌いを勝手に思い込みで善悪に置換して押し付けてるように感じられてなりません。そうでないなら、少なくとも本編とは直接関係無い電車内でのマナー違反とかの映像をバシバシ挿入して、悪者感を強調するのは余計だ。


それに、今時携帯が悪者なんて、もう時代遅れでしょう。ウルトラマンガイアで既に使ったネタだよ。
それも書いてるのが爺さんなら仕方ないなと思うけど(以下略)
劇中の内容で描かれる将来の暗さよりも、次代を担うはずの若き脚本家の質がこうだとウルトラの将来が心配。
昔の印象的なシーンや怪獣を使いまわし、有名キャストを使えばいいってもんじゃない。
オマージュとしてはまあ良く出来てたと思うけど、オマージュにしようとするあまり、新しいことができなくなってないか? 豊かだった畑をさらに耕して広げていくという感じがせず、使うたびに土が痩せていくなという感じです。寂しい限り。