三十八之巻 敗れる音撃

いやー、面白かった。
予告で見た限りでは、単にみどりさんがハッスルするだけの回かと思いましたが。


強敵が出て非常に大ピンチになる、というだけでも普通に面白いのですが、今回の音撃を打ち消す魔化魍は、以前にアームドセイバーを奪われた時にその力を調べられた結果だったという伏線付き。
これが伏線に使われるとは驚きでした。
確かに普通の人なら、武器を奪われ研究されるというのは、伏線に使いやすい…というより、そういう展開にならない方が変だろというエピソードなんですけど。
あの時は、波動が強過ぎて人間にはどうしようもないアームドセイバーが、たまたま姫と童子に奪われてしまい、敵が調査の必要上ということでたまたま都合よく彼らの別系統の科学力で波動を弱めてくれて、それを首尾よく奪い返せたというものでした。つまりアームドセイバーを使用可能にするための一連の展開です。
鬼陣営は変身できず弱体化したという過程があったため、奪われることにも無理が無く、また奪い返せた理由を姫と童子の幼稚な性格に帰する辺りも秀逸で、この展開だけで十分に面白かったため、これは井上敏樹一流のご都合主義展開*1であり、さすがにその場限りの一発ネタだろうと思ってました。
今回の脚本は井上敏樹ではなく米村正二なのですが、井上氏が初めから伏線にすべく用意してたのでしょうか。それとも米村氏が上手いこと掬い取ったのでしょうか。いずれにせよ見事な連携プレーです。


さらに今回面白かったのは、登場人物それぞれに悩みや挫折が描かれていることです。
個人的には、しばらく放置されてた明日夢とヒビキがメインで描かれたというだけでも十分に嬉しいのですが*2、この2人にしっかりとスポットを当てつつも、イブキ、あきら、ザンキ、トドロキにそれぞれの悩みをも描いており、それだけ詰め込んでるのに物語が支離滅裂にならないどころか、しっかりとまとまっているのが素晴らしい。
アンパンマン米村正二はバケモノか!?


イブキとあきらは前回からの悩みの続きなので、扱われて当然ではありますが。
あきらは失踪してしまったか〜。失踪したことにより、出番がほとんど無いにもかかわらず、苦悩として描くドラマが成り立っているのが絶妙です。
朱鬼に同調して魔道に落ちるかと危ぶまれましたが、その朱鬼には裏切られ、斬鬼に救われたことで、きっと本道に立ち返ってくれるものと思います。が、まだすぐには気持ちの整理がつかない模様。
イブキの方は師匠として悩みます。これまでいつも、苦労を感じさせない涼しい顔で、そうかと思えば単なる坊ちゃんには無い不屈の闘志を内に秘める、天性のサラブレッドという役柄でしたが。
「自分には師匠になる資格なんてない」と、初めて弱気な面を見せます。
そんなイブキを殴り、叱り飛ばすザンキ。カッコよすぎる!
弱気なイブキにカチンときたザンキが、「出ろ」とイブキを車の外にいざなうシーンの、間とか声とかが異様にカッコイイですよ。


そのザンキさんは、前回、「死ぬ」とまで言われてドクターストップがかかってたのに変身してしまい、何でピンピンしてんだ?とか思ってましたが、今回後遺症が!
疑問に思うような内容を放置せず、ちゃんと拾ってくれることは嬉しいです。
ですが、どうもザンキさんは死兆星が見える展開になってきたな…。
ザンキの死を乗り越えて、トドロキが雄雄しく成長するとかいう展開になりそうな予感。
トドロキの成長なんてどうでもいいから、ザンキ死なないでくれぇ!


そのトドロキは、ザンキさんにふられて落ち込むというのはいつものパターンですが、いつもはもっとコミカル風味なのに、今回はいやにシリアスな落ち込み描写です。
イブキに取られたのがそんなに悔しいのか。日菜佳の時もイブキに取られかけたしな。
「今のお前は殴る価値も無い」と言ったザンキの気持ちもよく分かるよ。もう独り立ちしてるのに相変わらず親離れしない弟子を見て、かわいい弟子なればこそ情けなくも思うよな。死期を悟った親の心境ならなおさら。


そしてメインの明日夢とヒビキ。この2人がこのように文句無く描かれたてのも久しぶりだ。
また桐谷が出てましたが、ヘタレ描写だったし、明日夢も多少なりとも口答えして、言われっ放しじゃなかった辺りで溜飲が下がる。
明日夢の悩みはヒビキさんのアドバイスによって解消した模様。ヒビキのアドバイスをすぐ実践してみる素直さが、明日夢のいいところだし、またヒビキが見込んだところだろうな。
そして、音撃が効かないという、かなり深刻なピンチなのに、あまり焦ったそぶりが無いのが、鬼たちのすごいところで、さすがに鍛えてますな。
しかし、そんな余裕も終盤一気に崩れ去ります。
みどり達の合宿所に魔化魍が来襲、先制攻撃を食らった上に、みどりと明日夢まで連れ去られ、頼みのヒビキも孤軍奮闘空しく傷を負い倒れる!
これはすごい展開だ〜!
しかも次回は、「始まる君」だよ。始まっちゃうよ、何かが! フラグ立っちゃうよ!
なのに次回お休みじゃんか! こんな状態で待たせるなんて、あんまりだ!

*1:誉めてます。ご都合主義でありながら、無理なく展開させて面白味まで感じさせるというのは、なかなか稀有な能力です。

*2:だってこの2人がメインだもん。他の人のエピソードは余禄に過ぎんよ