修行その9 ケナケナの女

ケナケナってのはどんな感情表現なんでしょうね。「けなげ」の意味なのかな。
メレの理央に対する想いをかなり深くえぐったお話で、見応えありでした。
それにしても、瞑想に入ると起きない理央ってどうよ?


メレがブラコに敗れ谷底に落とされる時、リンリンシーの状態になったのは、なかなか興味深かったです。
通常、敵の幹部と戦って倒す時は、俳優の素の顔というのは出ない場合が多いです。前作のゴードム神官ガジャもそうでしたが、普段は顔出しでも、ラストバトルだけはパワーアップして素の面の出ない姿に変身するというパターンですね。
中にアクションの上手いスーツアクターが入るという制作上の都合もありますが、おそらくそれ以上の理由として、人間の顔が出ている状態のものを倒すというのは、子供番組としては「絵的に酷い」ということが、一番の理由ではないかと思います。特に正義の味方側がそれをやるというのは、いかに悪辣な敵とはいえ、あまり後味の良いものではありません。
今回メレを痛めつけたのは悪玉のブラゴですから、後味の悪さは気にする必要はありませんが、それでも獣身変のとけた人間体のメレを、下が川でなく固い地面の谷底に突き落とすというのは、映像的にはかなりショッキングです。*1


こういう場合、普通だと獣身変が解けないまま落とされるしかありませんが、それだと決定的な敗北を印象付けられません。運の差とか、ちょっとした隙を突かれたとかいう程度では、ゲキゲキ砲を相手に修行するという発想までには繋がりませんから、ここは決定的に敗北する必要があります。
それをここでは、人間体の姿も保てないリンリンシーの状態まで戻すことで、見る側のショックを和らげると同時に、決定的な敗北を印象付けることに成功しています。
まさに一石二鳥の巧い演出だと思いました。


さらにパワーが落ちればリンリンシー状態に戻るというのを見せておくのは、冒頭でメレの回想だけに止まらず、現在なおメレは死者であるということを、映像的にはっきり見せる効果もあったと思われます。
このことは、後にブラゴが命をえさにメレを篭絡しようとした時、メレが見せた一瞬の迷いにも効果的に効いてると思います。


死者に意識があるとすれば、生ける者が死を怖れる以上の切実さで、死者は生を求めるのではないか。
死者にとっての、命への渇望。
その誘惑を振り切ったメレの、理央への想いがいかに強固なものであるかというところに繋がっていきます。

*1:獣身変していない平田裕香の姿で谷から落ちる姿を想像してみるとよくわかる。露出度の高い衣装でもあり、ものすごく痛そうではないか。