特撮まとめてレビューPART 2

ウルトラマンシリーズの旧作と新作をまとめて。


ウルトラマンマックス
終わっちゃったなあ…とふける感傷も元よりありませんが。
最後まで通して見てからでないと作品としての評価は下せないと思い、頑張って最後まで見ましたが、歴代ウルトラマンの中でも、最悪といっていい出来でした。


まず人物描写に一貫性が無いというのが致命的です。特に隊長とミズキ隊員が最悪でした。隊長などは話ごとにキャラが全く違ったりするし、ミズキ隊員に至っては、下手すると1話の話の中ですらちぐはぐな言動に出たりします。
キャラが一貫してたのは、アンドロイドのエリーくらい。「アンドロイド」というキャラ設定だったおかげで、そうぶれずに済んだという感が否めません。
隊員のみならず参謀や教授まで、全員がお笑い担当と言っていい中で、一人だけ品行方正なのが、マックスであるカイト隊員。ヒーローが品行方正というのは、悪役ライダーを量産する東映特撮と比較すれば、円谷の子供番組に対する良心を感じますが、もうちょっと性格にクセを付けられなかったものでしょうか。とても影が薄いヒーローになってしまった印象です。


それと、過去の怪獣という財産を全く生かせてなかったのが痛いです。
その財産を元手に、さらに大きく花開かせて、とはいかず、遺産を切り売りし、食いつぶすだけ食いつぶした印象。
たぶん脚本に問題あるのでしょう*1。話の中で、その怪獣であるべき必然性がほとんど無いし、過去との繋がりが無い設定なので、せっかくの過去怪獣もそれ以上膨らましようがない。マックスボックスのネタになってることで、もしかしたら親子のコミュニケーション促進に寄与しているということはあるかも知れませんが。
過去怪獣を出すことで、そのデザインセンスの良さは再確認されました。が、それは逆に言うと今のデザインセンスがてんでダメということです。後続がこれでは、過去の賢人も浮かばれません。


演出はレトロだったり前衛的だったり、もうちょっと作品としての色の一貫性が欲しいなとは思いますが、それはそれとして、各話の中では魅力的であり目を引く部分も多かったです。
通し作品として見るとorzですが、短編集のつもりで見れば、見るべき部分はあったかも。
ラストシーンのメッセージ「未来で会いましょう」を見て、この作品には作品を通じてのテーマやメッセージが無かったのだなと、改めて再認識しました。


ウルトラマンメビウス
始まる前の印象としては、

  • 時間帯が夕方に変更 → マックスの不人気は、決して放送時間帯のせいばかりではないのだが…*2
  • グドン→また過去怪獣か。ヤな予感。過去の遺産の切り売りは止めてくれい
  • ウルトラの父 → 怪獣のみならず、ウルトラ兄弟まで…!
  • ウルトラマンメビウス → お腹のあたりの皮膚が一枚薄いのが、どうも気になるんですが
  • ウルトラマンの中の人 → 髪型が…

こんな不安材料だけでお腹いっぱいなウルトラマンメビウスが、いよいよ始まってしまいました。


メビウスウルトラの父の指令により、地球にやってきた若きウルトラマンという設定です。
地球人との接触により、「きっと何か得るものがあるだろう」と若者を励ますウルトラの父
ウルトラマンというと、地球を守護してくれるもの、愛と勇気を教導してくれるものとして、地球人から見ると神格化されて描かれがちです。子供の頃、ウルトラ兄弟の数万歳という年齢を知った時には、ウルトラマンとは特別な存在なのだなあ、それに比べて地球人の何とちっぽけなことよと、むしろ悲しくなったものでしたが、そんな神であるウルトラマンの中でも上位に君臨するウルトラの父の口から、地球人から学ぶものがあると示唆されたのは、驚きであり素直に嬉しいです。
ウルトラマンとは、「絶対神たる私が、哀れな地球人を守ってやろう」などという偽善的ヒーローではなかったのだ。
我々地球人も、決して一方的に守られるだけの、か弱き羊などではなかったのだ。ある部分ではウルトラマンにだって一目置かれる、対等な宇宙の仲間なのだ。
番組の冒頭で父の発したこの一言だけで、メビウスに対する期待値はぐぐっと上がりましたよ。


マックスなんてさ〜、「本当は手出ししちゃいけないんだけど、君の頑張りに共感したから助けてあげるよ、はっはっは」みたいな感じで、明らかに人類を見下してるし、それでも一応一緒に頑張ってきたのに、ある日突然理由も言わず「帰らなきゃなんないから」とか言い出して、地底人との戦いでは「地球人同士の内輪もめじゃん、俺知らね」って感じで、あんまりでしたからね。


今度のウルトラマンは、ハヤタ方式でなくモロボシダン方式。地球人の体を借りるのではなく、ウルトラマン自身が地球人の姿に擬態します*3。一般的地球人の常識に戸惑ったり、それをもとに話を膨らましたり、成長を描いたりといったことが期待できそう。
各隊員も、それぞれに前職が描かれており*4、それに由来する特殊な才能を身につけてるし、何よりバックボーンがしっかりしてる。ママまで登場してる隊員もいる。シリアル路線で行くにしても、コメディ路線で行くにしても、バックボーンは大切ですよ。背骨が皆無だったマックスの後だけに、余計そう思います。
彼らをGUYSの隊員にするくだりは、やや強引だったなという気もしますが。


ウルトラマン80以前のウルトラシリーズとも歴史が繋がってるので、これでこそ過去怪獣を出す意味があります。
グドンの登場でクゼ隊員が怪獣&ウルトラマンオタクだと判明し、今後の情報担当を務めるんだなというのが見えたり、バードンの登場でウルトラマンも死ぬんだという衝撃の事実が広がったり、過去怪獣が多少は意味のある使われ方をしています。
逆に、これ以上意味のある使い方となると、過去のエピソードと絡める形になり、過去作を知らない子供や一般視聴者にはつらくなるので、これくらいな使われ方の方がいいのかな。


こうして見ると、マックスも反面教師として質の向上に寄与しているなあ。何せ欠点が分かり易過ぎたからなあ。


しかし、GUYSのメテオールとかいう超科学は卑怯だなあ。少なくとも、もっとちゃんとした説明が欲しいところです。
何だかよく分からない超電磁竜巻で怪獣をぶん投げるパワーと、スピードアップばかりでない運動性能の驚異的向上*5、さらにバリアにもなるという万能ぶり。
ウルトラマンの3分よりも厳しい、1分というタイムリミットさえ無ければ、どんな怪獣でも倒せそうな超兵器です。しかもこの制限時間は、物理的、能力的な限界ではなく、政治的な限界だからなあ。
高度な技術と経済力で、優秀かつ高価な装備を持ちながらも、拳銃を持ってても発砲しちゃいけない警察や、実質は軍でも軍として活動しちゃいけない自衛隊を持つ、いかにも日本らしい限界です。

*1:とやや婉曲に言いましたが、本当は断言したい。脚本がまるでダメだ!

*2:セーラームーンは偉大だったなあ。その時間枠を引き継ぐものがあの体たらくか…

*3:ワームかよ!

*4:設定上だけでなく、ちゃんと描かれたのがいいです

*5:飛行機のくせにUFOの反重力制御のような動きを実現、ってどうなってんだ?