三十一之巻 超える父

むむ〜。何と言ったらいいのか。
前回から脚本が井上敏樹に替わっているわけですが、それで非難囂々な人とかも多かったわけですが、個人的に前回はあまり気にしてなかったのですよ。というのは、既存キャラにあまり手を入れてなかったので。響鬼さんがちょっと情けない感じというのはありましたが、もともと不器用なところはあったので(主に機械系で)、慣れない仕事ということで、ほとんど気になりませんでした。
ともかく作品を見ての判断だ、井上敏樹だからどうこうとは言うまいと思ってましたし。
しかし今回のは…。


まず明日夢
京介に問題提起され、父に会うかどうか悩むというのは良いけど、ヒビキさんに相談するという流れが不自然というか性急過ぎる。
彼は彼なりにプライドや見栄というのを持っており、ヒビキさんにかっこ悪いところや悩んでるところなんかを見せないようにしている。しかし根が素直なので、悩んでるとすぐそれが顔に出てしまう。彼を取り巻く大人たちは、その様子を見て、彼を傷つけないようにさり気なく、抽象的ながらも何か得るものがあるアドバイスをくれる。
それがこれまでの明日夢像だと思う。しかし…
今回は母親に父のことを聞いた直後、シーンが変わるといきなりヒビキさんに相談しているシーン。
少年は少年なりに悩む。悩みながら答えを見つける。それが今までの明日夢像なのに、なんなんだ、この短絡的な展開は。


それからヒビキ。
明日夢に送るアドバイスが手厳しい上に直球過ぎる。含蓄が無い。考えさせるところも無い。
いつも感じさせる懐の深さが全く無く、今回は全く存在感に乏しかった。
それから、きび団子の箱詰め程度で何をそんなに不器用さらしてるのか。何故たちばなの仕事にぶぅたれてるのか。
ヒビキさんは確かに不器用なところはあるが、鍛えることで克服する人だ。バイクも苦手だったが、練習を積んで凱火にも乗れるようになった。
また、今与えられた仕事を一生懸命やるということを体得している人だ。弦に拘るトドロキやドラムになれなかった明日夢は、ヒビキの生き様から「今できることを精一杯やる」ということを学んだ。
前回の不器用は初回の不慣れということで許されるが、ヒビキの人物像であれば、今回はビシッとこなして、鼻の頭を親指でこすって、やればできるんだぞと言わんばかりの得意げな表情を作るところだ。


おやっさんと日菜佳は先週から風邪でぶっ倒れてるが。
本当は起きれるのに仕事をサボるために仮病しているかのような描写だ。
そんな無責任な大人たちじゃないぞ。


それからイブキ&あきら。こっちは人物像ではなくストーリーテリングの方ですが。
もの凄く苦戦してたくせに、しかも夜でたちばなも営業時間終わってるだろうに、ヒビキに対してたちばなに戻れは無いだろう。
「当たりです。それが、このすぐ近く…」でいきなり襲い掛かられるって、そんな展開あり?
そんなそばにいるなら、鬼なら気配を察知しろよ。
最後はまたヒビキの救援で助かったけど、ヒビキが出て以降、途中からイブキは画面に全く映らず仕舞い。
今までのイブキの頑張りを労うようなシナリオ的温情は全く無し。
何この使い捨てな扱いは?


最後に京介。
何なんだ、あの最後のセリフは。もう作品イメージぶち壊し。
京介にそういうセリフを言わせたきゃ言わせてもいいけど、それをラストに持ってくるな。


明日夢響鬼の音撃棒を拾って投げ渡すシーンは、彼なりの成長が見えてよかった。
先週のバイクから飛び降りるあきらも良かった。
魔化魍火車もなかなか良い動きだった。
そんな感じで、アクション部分は良くなったところもある。
明日夢なりの父への挑戦が、父のやりかけの犬小屋を完成させることというのも良かった。
今回の主題はまさにそこだと思うので、一番大事なところはかろうじて押さえた感があるけど、細部があまりに杜撰だ。
今までの作りが非常に丁寧だっただけに残念だ。