時の海鳴り

郊外で謎の集団失踪事件が相次いでいる。
事件発生時に奇妙な海鳴りの音がしていたという証言があるため特殊な聴覚をもつマリナが警察から捜査協力を依頼された。
現れた刑事、桐李に会ってなぜか懐かしさを感じるマリナ。
桐李と打ち解けたマリナは子供の頃の祖父の記憶を話す。
CBC公式ページより http://hicbc.com/tv/mebius/main.htm

非常に味わい深いお話でした。
幼少時の思い出が情緒たっぷりでリアルだったことが一つの勝因でしょう。
紙飛行機というキーアイテムを持ってきたことで、思い出話への導入も違和感無くスムーズでしたし、おじいちゃんの人柄も短いシーンで非常に良く出ていたと思います。
バイクにまたがって遊ぶ子供たちというのも、とても自然で良かったです。マリナがバイクレーサーになったのも、この原風景の影響でしょうか。
幼少時のマリナの子は可愛いですね。今のマリナとは似ても似つか(以下略)


もう一つの勝因は、記憶と事実との整合です。
マリナはおじいちゃんが死んだ夏の記憶がなぜか曖昧です。特に、ある晩に家を飛び出してどこかに行ったことについては、さっぱり記憶が無く、わずかに白鳥*1の夢のような記憶があるのみです。
でも時間を遡りそのシーンを目撃することで、記憶が甦ってきて、それは桐李が撃たれるというビジョンに直結します。
マリナは駆け出し、幼少マリナを庇う桐李に向けて放たれた怪獣の攻撃を、間一髪で食い止めます。
間に合った、助けることができた、しかもウルトラマンメビウスも登場、もう安心という空気が流れますが…。
結局、桐李は撃たれてしまいます。大人マリナを庇って、記憶の通りの姿で。
死にゆく桐李は、幼少マリナを悲しませないために、彼女に暗示をかけて、この晩の記憶を夢として封じます。


マリナは「強い心を持て」と教えられ、おじいちゃんの死の悲しみをぐっと我慢していました。
賞をとって貼り出されたマリナの習字は「強い心」*2。桐李はこれを見て、この世界がマリナの過去だと気付き、マリナが狙われていることを悟ります。
このように一つの要素が複合的に他の要素と結びついてるのも上手いですね。


ところで、「桐李(トウリ)」という名前は珍しいな。中国人? 苗字検索で0件でした。よほど珍しいと思った苗字でも0ってことはあまり無いんだけど。
マリナの聴覚というのは警察でも評判になるほど有名なのですね。すごいなー。桐李はどこでこの警察の依頼情報を聞きつけて警察になりすましたのかな?
ていうか、怪獣すら警戒して、わざわざ誘い込んで抹殺を目論むって、マリナの聴覚はどれだけ神懸ってるんでしょう?
それに、「レッサーボガールもいなくなった今、怪獣の襲来も無い。これからは民間協力の時代だ」と言いつつ結局怪獣の案件でしたが、この怪獣はなんでいるの?
演出上で一番変なのは、最初の集団失踪の場所も、マリナのさらわれた場所も、ミライの突き止めた場所も、全部同じ場所だってことです。それなら海鳴りの音なんて探る以前に場所特定できそうなものですが。海鳴りの音という証言をどこで採取したんだと…。
とまあ、細かいところではツッコミもいろいろとありますが。

*1:実は桐李の真の姿

*2:やたらと上手い字です